
毎月届く電気料金の請求書を見て、「燃料費調整額って何だろう?」と疑問に思ったことはありませんか。
電気代の内訳を確認すると、基本料金や電力量料金とは別に記載されているこの項目。実は、私たちの電気代を大きく左右する重要な要素です。
この記事では、燃料費調整額の基本的な仕組みから計算方法、高騰の理由、さらには電気代を抑えるためのポイントまで、わかりやすく解説していきます。
この記事でわかること
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この記事の目次
燃料費調整額とは?電気料金に影響する重要な項目
燃料費調整額とは、火力発電に使われる燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動を、毎月の電気料金に反映させるための金額です。日本の電力の約65%は火力発電でまかなわれているため、燃料価格の変動は電気代に直結します。
燃料費調整制度が導入された理由
日本は火力発電に必要な燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。そのため、世界の情勢や為替レートの変動によって燃料価格が大きく変わります。
もし燃料価格の変動を電気料金に反映できなければ、電力会社は燃料費が高騰したときに大きな赤字を抱えることになります。逆に、燃料費が下がったときには過剰な利益を得てしまいます。このような不公平を解消するために、1996年から燃料費調整制度が導入されました。
電気料金における燃料費調整額の位置づけ
毎月の電気料金は、以下の要素で構成されています。

電気料金の計算式
電気料金 = 基本料金 + 電力量料金 ± 燃料費調整額 + 再エネ賦課金
燃料費調整額は、使用した電力量(kWh)に応じて計算されます。燃料価格が基準より高ければプラス調整(電気代が上がる)、低ければマイナス調整(電気代が下がる)となります。
つまり、燃料費調整額の動向によって、同じ電力使用量でも電気代が数千円単位で変わることがあるのです。
| 電気料金の構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 基本料金 | 契約アンペア数に応じた固定料金 |
| 電力量料金 | 使用電力量×単価で計算される料金 |
| 燃料費調整額 | 燃料価格の変動を反映する調整額 |
| 再エネ賦課金 | 再生可能エネルギー普及のための費用 |
燃料費調整額の仕組みをわかりやすく解説
燃料費調整額がどのように決まるのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。
電気料金の計算式と燃料費調整の位置
燃料費調整額は、以下の計算式で求められます。
燃料費調整額の計算式
燃料費調整額(円)= 燃料費調整単価(円/kWh)× 1か月の使用電力量(kWh)
たとえば、燃料費調整単価が-7.65円/kWhで、1か月の使用電力量が300kWhの場合、燃料費調整額は「-7.65円 × 300kWh = -2,295円」となり、電気代から約2,300円が差し引かれることになります。
プラス調整とマイナス調整の違い
燃料費調整額がプラスになるかマイナスになるかは、「基準燃料価格」と「平均燃料価格(実績燃料価格)」の比較で決まります。基準燃料価格は各電力会社が料金改定時に設定した「基準となる燃料価格」で、これと実際の燃料価格を比較して調整額が算出されます。
| 調整の種類 | 条件 | 電気代への影響 |
|---|---|---|
| プラス調整 | 平均燃料価格 > 基準燃料価格 | 電気代が上がる |
| マイナス調整 | 平均燃料価格 < 基準燃料価格 | 電気代が下がる |
2024年後半から2025年にかけては、燃料価格が基準燃料価格を下回る状態が続いているため、多くの電力会社でマイナス調整となっています。
出典:東京電力エナジーパートナー「燃料費調整単価等一覧」燃料価格が電気料金に反映されるタイミング
燃料費調整額は、3〜5か月前の燃料価格をもとに計算されます。たとえば、2025年6月分の電気料金に反映される燃料価格は、2025年1月〜3月の貿易統計価格です。

つまり、燃料価格の変動が電気料金に反映されるまでには、2〜3か月程度のタイムラグがあります。これは、貿易統計の公表スケジュールや検針日の都合によるものです。2009年の制度改正で、反映までの期間は従来より1か月短縮されました。
燃料費調整額の計算方法【具体例付き】
燃料費調整額がどのように計算されるのか、具体的な数字を使って説明します。
燃料費調整単価の計算式
燃料費調整単価は、以下の計算式で算出されます。

燃料費調整単価の計算式
燃料費調整単価(円/kWh)=(平均燃料価格 - 基準燃料価格)× 基準単価 ÷ 1,000
基準燃料価格・平均燃料価格・基準単価とは
難しい表現が並んでいますが、それぞれの定義は下記になります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 基準燃料価格 | 電力会社が料金改定を申請した際の直近3か月の原油・LNG・石炭の貿易統計価格の加重平均値。各電力会社の火力発電における燃料構成比を加味して算出される |
| 平均燃料価格(実績燃料価格) | 毎月の原油・LNG・石炭の貿易統計価格のうち、3〜5か月前の3か月平均 |
| 基準単価 | 平均燃料価格が1,000円/kl変動した場合の1kWhあたりの変動額。電力会社ごとの火力発電における燃料消費量を販売電力量で割って算出 |
実際の計算シミュレーション
東京電力の2025年11月分を例に、実際の計算を見てみましょう。
東京電力 2025年11月分の例
- 基準燃料価格:86,100円/kl
- 平均燃料価格(2025年6〜8月):44,300円/kl
- 燃料費調整単価:-7.65円/kWh
平均燃料価格が基準燃料価格を大幅に下回っているため、マイナス調整となっています。仮に月間使用量が260kWh(一般家庭の平均)の場合、燃料費調整額は「-7.65円 × 260kWh = -1,989円」となり、約2,000円の値引きになります。
燃料費調整額の推移と高騰の理由
燃料費調整額は、ここ数年で大きく変動しました。その背景を詳しく見ていきましょう。
近年の燃料費調整額の推移
2022年以降、燃料費調整額は激しく変動しています。
| 時期 | 東京電力の燃料費調整単価 | 状況 |
|---|---|---|
| 2022年前半 | プラス調整(上昇傾向) | 燃料価格高騰の影響 |
| 2022年後半 | 上限到達 | 規制料金の上限に到達 |
| 2023年後半 | マイナス調整 | 燃料価格下落・政府補助 |
| 2024年後半 | -6〜-10円台 | 燃料価格安定 |
| 2025年11月 | -7.65円/kWh | マイナス調整継続 |
| 2026年2月 | -12.22円/kWh | 政府補助を含む |
燃料価格高騰の背景
2022年は、世界的なエネルギー危機により燃料費調整額が急騰しました。その主な原因は以下の通りです。
ロシアのウクライナ侵攻により、資源大国であるロシアからの天然ガスや石油の供給が不安定になりました。これにより、2022年のピーク時の燃料輸入価格は2022年1月比で原油が約1.7倍、石炭が約2.8倍、LNGが約1.7倍に高騰しました。
円安の影響
燃料は海外から輸入するため、円安になると円建ての燃料価格が上昇します。2022年には急激な円安が進み、1ドル150円を超える水準に達しました。これも燃料費調整額の上昇に大きく影響しました。
ただし、2024年以降は燃料価格が落ち着きを見せ、燃料費調整額もマイナス調整が続いています。政府による電気料金激変緩和措置も、電気代の抑制に貢献しています。
燃料費調整額の上限とは?規制料金と自由料金の違い
燃料費調整額には「上限」が設定されている場合とされていない場合があります。簡単にまとめると、規制料金には「上限」があり、自由料金には「上限」がありません。
| 料金種別 | 上限の有無 | 特徴 |
|---|---|---|
| 規制料金(従量電灯など) | 上限あり | 燃料高騰時も一定の保護あり |
| 自由料金プラン | 上限なしが多い | 燃料高騰時は青天井のリスク |
規制料金には上限がある
規制料金(大手電力会社の「従量電灯」など)では、燃料費調整額に上限が設けられています。具体的には、基準燃料価格の1.5倍を上限として設定されています。これは消費者保護の観点から設けられた重要なセーフティネットです。
つまり、どれだけ燃料価格が高騰しても、上限を超えた分は電力会社が負担することになります。消費者を急激な電気代上昇から守るための仕組みといえます。
自由料金には上限がない場合が多い
一方、自由料金プラン(新電力や大手電力会社の新しいプラン)では、燃料費調整額に上限が設定されていない場合が多くあります。つまり、燃料価格が高騰すると、その分がそのまま電気代に反映される「青天井」のリスクがあります。
上限撤廃の動きとその影響
2022年の燃料価格高騰時、規制料金では上限に達し、上限を超えた分は電力会社が負担しました。大手電力会社7社は2022年度に赤字となり、2023年6月には規制料金の値上げ申請(約3割〜5割の値上げ)が認可されました。
この経験を踏まえ、電力プランを選ぶ際には燃料費調整額の上限の有無を確認することが重要です。通常時は自由料金の方が安くても、燃料高騰時には規制料金の方が安くなる「価格逆転現象」が起こる可能性があります。2023年には実際にこの現象が多くの家庭で発生しました。
電力会社ごとの燃料費調整額の違いを比較
燃料費調整額は、電力会社やプランによって異なります。主な大手電力会社の状況を見てみましょう。
大手電力会社10社の比較
燃料費調整単価は、各電力会社の火力発電における燃料構成比によって異なります。石炭火力の比率が高い会社と、LNGの比率が高い会社では、同じ燃料価格の変動でも調整額に差が出ます。
| 電力会社 | 特徴 |
|---|---|
| 東京電力 | LNG比率が高く、規制料金には上限あり |
| 関西電力 | 原子力比率が高く、燃料費調整の影響が比較的小さい |
| 中部電力 | LNG・石炭をバランスよく使用 |
| 九州電力 | 原子力の稼働率が高い |
新電力の特徴
新電力(電力自由化以降に参入した小売電気事業者)の約90%は、大手電力会社と同じ燃料費調整額を採用しています。ただし、独自の燃料費調整制度を設定している会社や、市場連動型のプランを提供している会社もあります。
- 新電力を選ぶ際のチェックポイント
・燃料費調整額の上限の有無
・大手電力会社と同じ単価か、独自の算定方式か
・市場連動型の場合、卸電力市場価格の変動リスク
燃料費調整額を抑えるためにできること
燃料費調整額自体を直接コントロールすることは難しいですが、電気代全体を抑えるためにできることはあります。
節電で使用量を減らす
燃料費調整額は「燃料費調整単価 × 使用電力量」で計算されるため、使用電力量を減らせば燃料費調整額も減少します。
効果的な節電方法としては、エアコンの設定温度の見直し、照明のLED化、待機電力のカット、省エネ家電への買い替えなどがあります。特にエアコンは電力消費が大きいため、温度を1度変えるだけで約10%の節電効果が期待できます。
電力会社・プランの見直し
燃料費調整額の上限の有無や算定方法は、電力会社やプランによって異なります。燃料価格が不安定な時期には、上限のある規制料金プランを選ぶことで、急激な電気代上昇を防ぐことができます。
また、太陽光発電を導入している家庭では、自家消費を増やすことで購入電力量を減らし、燃料費調整額の影響を軽減できます。蓄電池と組み合わせることでさらに効果が高まります。
燃料費調整額と再エネ賦課金の違い
電気料金の内訳には、燃料費調整額のほかに「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という項目があります。この2つは似ているようで、全く異なる性質を持っています。
| 項目 | 燃料費調整額 | 再エネ賦課金 |
|---|---|---|
| 目的 | 燃料価格の変動を反映 | 再エネ普及のための費用負担 |
| 変動 | 毎月変動(燃料価格による) | 年度ごとに決定(全国一律) |
| 2025年度の単価 | 電力会社・月により異なる | 3.98円/kWh(全国一律) |
| プラス/マイナス | 両方あり得る | 常にプラス(加算) |
2025年度の再エネ賦課金単価は3.98円/kWhで、過去最高となりました。月間使用量260kWhの一般家庭では、月額約1,035円の負担となります。
電源調達調整費(独自燃調)との違い
一部の新電力では、大手電力会社の燃料費調整額とは異なる「電源調達調整費」や「独自燃調」を設定している場合があります。
これらは、卸電力取引市場(JEPX)の価格変動を反映する仕組みで、市場価格が高騰すると大きく値上がりするリスクがあります。2022年の市場価格高騰時には、独自燃調を採用していた新電力の契約者が、大手電力会社の従量電灯よりも高い電気代を支払うケースも発生しました。
電力会社を選ぶ際は、燃料費調整額の算定方法(大手と同じか独自方式か)を必ず確認しましょう。契約前に料金体系を十分に理解することが、電気代の節約につながります。
燃料費調整額に関するよくある質問
燃料費調整額がマイナスになるのは、実際の燃料価格(平均燃料価格)が基準燃料価格を下回ったときです。2024年後半から2025年にかけては、燃料価格が安定しているため、多くの電力会社でマイナス調整が続いています。マイナスの場合は、電気代から差し引かれます。
一般的な電力会社のプランでは、燃料費調整額(または類似の調整制度)が設定されています。ただし、再生可能エネルギー100%のプランなど、一部のプランでは燃料費調整額が適用されない場合もあります。契約前に料金体系を確認することをおすすめします。
燃料費調整額は国際的な燃料価格と為替レートに左右されるため、正確な予測は困難です。ただし、再生可能エネルギーの普及や原子力発電の再稼働が進めば、火力発電への依存度が下がり、燃料費調整額の変動幅は小さくなる可能性があります。政府は2030年度に再エネ36〜38%、原子力20〜22%を目標としています。
出典:環境エネルギー政策研究所まとめ|燃料費調整額の仕組みを理解して電気代を賢く管理しよう
この記事では、燃料費調整額について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
燃料費調整額のポイント
- 火力発電の燃料価格変動を電気料金に反映する仕組み
- 燃料価格が基準より高ければプラス、低ければマイナス調整
- 規制料金には上限あり、自由料金には上限なしの場合が多い
- 3〜5か月前の燃料価格が反映されるタイムラグがある
- 節電や電力会社の見直しで電気代を抑えることは可能
燃料費調整額は、私たちの電気代に大きな影響を与える要素です。仕組みを正しく理解し、自分に合った電力プランを選ぶことで、電気代を賢く管理していきましょう。
電力会社やプランを選ぶ際は、基本料金や電力量料金だけでなく、燃料費調整額の算定方法や上限の有無も必ず確認することをおすすめします。
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