
キュービクルを設置している事業者にとって避けて通れないのが、法定点検の実施とその費用負担。「点検費用はどのくらいかかる?」「実際にどんな点検が必要?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
キュービクルの点検は電気事業法で義務付けられているため、実施しないという選択肢はありません。点検を怠ると停電事故による事業停止、感電・火災事故、波及事故による損害賠償など、点検費用を大きく上回る損失を招く可能性があります。
この記事では、キュービクル点検費用の詳細な相場から法的義務の内容、点検を怠った場合のリスクまで、事業者が知っておくべき情報を包括的に解説します。適切な保安管理により、安全性とコスト効率を両立させるためのポイントを確認していきましょう。
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この記事の目次
キュービクル点検費用の相場

キュービクルの点検費用は受電設備の容量や業者によって幅があるものの、一般的な相場は存在します。月次点検と年次点検を合わせた保安管理業務の委託費用として、多くの事業者が毎月一定額を支払っているのが実情です。
実際、受電設備容量100KVAで月額9,000円~11,000円程度、200KVAで12,000円~17,000円程度、500KVAで20,000円~28,000円程度が相場となっています。
ただしこれらの金額はあくまで目安であり、依頼する業者や地域、具体的なサービス内容によって変わることを覚えておきましょう!
月次点検の費用相場
月次点検は毎月または隔月で実施される基本的な点検で、施設運転中に行われるため比較的簡単な内容となっています。外観点検、漏洩電流測定、電圧・電流測定が主な作業内容です。
月次点検単体の費用相場は、受電設備容量によって以下のような違いがあります。
受電設備容量 | 月次点検費用(月額) |
---|---|
100KVA | 6,000円~8,000円 |
200KVA | 8,000円~12,000円 |
500KVA | 15,000円~20,000円 |
また、絶縁監視装置を設置している場合、月次点検を隔月実施にできます。しかし、これにより点検費用が大幅に安くなるわけではありません。むしろ設備の安全性を考慮すると毎月実施する方が望ましいといえるでしょう。
月次点検は電気が流れた状態で行うため、作業時間も短く、施設の運営に与える影響も最小限に抑えられます。
- 絶縁監視装置とは?
電気設備で「漏電」が起きていないかを常時監視する装置です。絶縁状態が低下すると警報を発して、感電や火災といった事故を未然に防ぐ役割を果たします。
年次点検の費用相場
年次点検は施設の運転を停止して行う精密な点検で、月次点検よりも専門的かつ詳細な内容となります。外観点検、観察点検、絶縁抵抗測定、継電器動作試験など幅広い項目を実施するため、複数名での作業が基本です。
年次点検の費用相場は以下のとおり。
点検項目 | 実施頻度 | 費用相場 |
---|---|---|
年次点検(基本点検) | 年1回 | 50,000円~100,000円 |
総合点検 | 5年に1回 | 100,000円~300,000円 |
定期清掃 | 年1回 | 30,000円~70,000円 |
絶縁油の交換・検査 | 5年に1回 | 50,000円~150,000円 |
年次点検では停電作業が必要になるため、事前のスケジュール調整が重要です。特に工場や商業施設では、業務への影響を最小限に抑えるため休日や夜間に実施するケースが多く、その場合は割増料金が発生することもあります。
また、点検中に異常や故障が発見された場合の修理・交換費用は別途必要になるため、予算に余裕を持って計画することが大切です。
点検費用に影響する要因
キュービクル点検費用は複数の要因によって変わるため、相場だけで判断するのは適切ではありません。
まず最も大きな影響を与えるのが受電設備容量(KVA)です。容量が大きくなるほど点検項目や作業時間が増加するため、費用も比例して高くなります。
ほかには地域による違いもあります。都市部では人件費が高い傾向にあり、地方と比較して10~20%程度費用が高くなることがあります。一方、地方では業者の選択肢が限られるため、競争原理が働きにくく、結果的に費用が高止まりするケースも存在します。
依頼する業者の違いも重要な要因です。主な業者タイプには以下があります。
主な点検業者タイプ
- 一般財団法人の電気保安協会:全国規模で安定したサービス
- 電気管理技術者協会:地域密着型で柔軟な対応
- 民間の電気保安法人:競争力のある価格設定
- 個人事業主の電気主任技術者:小規模施設向けで比較的安価
さらに、サービス内容の違いも費用に大きく影響します。基本的な点検だけでなく、遠隔監視システムの導入、24時間緊急対応サービス、各種書類作成代行などの付加サービスを含むプランを選択すると、その分費用は上昇します。
ただし、これらのサービスは万一のトラブル時に大きな価値を発揮するため、事業の性質を考慮して検討することが重要でしょう。
キュービクルの点検が法律で義務付けられている理由
キュービクルの点検が必須とされているのは、単なる推奨事項ではなく法的義務だからです。
キュービクルは「自家用電気工作物」に分類され、電気事業法により厳格な保安管理が求められています。高圧電気を扱う設備である以上、火災や感電といった重大事故のリスクが常に存在するため、国は法律によって安全確保を義務化しているのです。
この法的義務を怠ると、事故発生時の責任問題だけでなく、行政処分の対象となる可能性もあります。
電気事業法による保安規程の義務
電気事業法では、自家用電気工作物の設置者に対して明確な法的義務を課しています。
最も重要な義務の一つが「保安規程の制定・届出・遵守」です。事業者は電気工作物の維持・工事・運用に関する保安確保のため、独自の保安規程を策定し、経済産業大臣に届け出なければなりません。
保安規程には以下の項目を必ず含める必要があります。
項目分類 | 具体的な内容 |
---|---|
工事・維持・運用 | 業務管理者の職務・組織、従事者への保安教育、巡視・点検・検査の方法 |
運転・操作 | 電気工作物の運転・操作方法の詳細 |
災害時対応 | 災害・非常時に取るべき具体的措置 |
記録・保存 | 保安記録の管理方法、法定検査の実施体制・記録保存 |
さらに「技術基準の適合維持」も義務付けられており、経済産業省令で定められた技術基準に適合するよう継続的に電気工作物を維持する必要があります。定期的な点検はこの技術基準適合を確認する重要な手段となっています。
電気主任技術者の選任と外部委託制度
電気事業法では、自家用電気工作物の設置者に対して電気主任技術者の選任・届出を義務付けています。電気主任技術者は国家資格で、電気設備の工事・維持・運用に関する保安監督業務を行う専門家です。
選任方法には「自社選任」と「外部委託承認制度」があります。多くの事業者は専門人材確保の負担を避けるため、外部委託承認制度を活用しています。外部委託が認められる条件は以下の通りです。
外部委託が認められる条件
- 電圧7kV以下の需要設備であること
- 出力2,000kW未満の発電所(太陽光、風力、水力、火力)であること
- 委託契約書の締結と告示に定められた頻度での点検実施
- 緊急時に2時間以内で現場到着できる体制確保
- 連絡責任者の選任
この制度により、多くの事業者は専門人材を雇用することなく、法的義務を果たすことができています。委託先には一般財団法人の電気保安協会、民間の電気保安法人、個人の電気主任技術者などがあります。
自家用電気工作物の保安責任
キュービクルを含む自家用電気工作物には明確な定義があります。「電力会社から600Vを超える電圧で受電している設備」「構外にわたる電線路を有する設備」「小出力発電設備以外の発電設備」がこれに該当し、一般的に電力会社と高圧受電契約を結んでいる事業者は自家用電気工作物の設置者となります。
設置者の保安責任は法的な強制力を持つ義務です。
責任の種類 | 具体的な内容 |
---|---|
技術基準遵守責任 | 経済産業省令の技術基準に継続的に適合させる義務 |
保安体制整備責任 | 適切な保安規程の策定と実施体制の構築 |
専門家配置責任 | 電気主任技術者の選任または外部委託の実施 |
記録保存責任 | 点検結果や保安活動の適切な記録・保存 |
重要なのは、これらの責任は事業者自身が負うものであり、外部委託したとしても最終的な責任は設置者にあることです。法的な義務という観点だけでなく、社会的責任を果たすという観点からも、適切な保安管理は事業者にとって不可欠な要素といえるでしょう。
キュービクルで実施される点検の種類と内容
キュービクルの保安管理では、法令に基づいて月次点検、年次点検、臨時点検の3種類の点検を実施します。月次点検は運転中に行う日常的な点検、年次点検は停電を伴う精密な点検、臨時点検は異常発生時の緊急点検です。各点検には明確な実施基準が定められており、電気主任技術者の指示のもと適切に実施されています。
月次点検(日常点検)の内容
月次点検は施設・設備の運転中に実施する基本的な点検で、毎月または隔月の頻度で行われます。絶縁監視装置を設置している場合は一定の安全性が確保できるため、隔月での実施が認められています。
月次点検の主要な実施項目は以下の通りです。
点検項目 | 具体的な内容 |
---|---|
外観点検 | 開閉器・変圧器・配電盤・制御盤・外箱・接地装置の目視確認 |
漏洩電流測定 | 変圧器などの漏洩電流を測定し、絶縁状態を確認 |
電圧・電流測定 | 配電盤の電圧・電流値が標準範囲内かを確認 |
周辺環境確認 | キュービクル周辺の危険物確認や雑草の状況チェック |
外観点検では肉眼・音響・臭覚・温度計などを使用して異常の有無を確認し、電圧測定では標準電圧(101±6V、202±20V)の範囲内に収まっているかを確認します。運転中に実施するため作業時間も短く、施設運営への影響を最小限に抑えることができます。
年次点検(精密点検)の内容
年次点検は施設の運転を停止して行う最も詳細かつ専門的な点検で、年に1回の実施が法的に義務付けられています。停電作業が必要になるため事前のスケジュール調整が重要で、通常は複数名の技術者によって実施されます。
年次点検では月次点検の内容に加えて、より高度な測定・試験を実施します。
年次点検の内容
- 外観点検・観察点検:運転停止状態でのより詳細な目視・触診確認
- 絶縁抵抗測定:開閉器・遮断器・断路器・変圧器・配電盤の絶縁性能確認
- 継電器動作試験:地絡継電器・過電流継電器・過電圧継電器などの動作確認
- 接地抵抗測定:接地装置の接地抵抗値測定
- 変圧器内部点検:絶縁油の点検・内部構造の詳細確認
- 保護装置動作試験:各種保護装置の正常動作確認
観察点検は施設の運転停止後にキュービクルに直接触れて行う点検で、継電器動作試験では試験機を使用して意図的に異常な電圧・電流を発生させ、保護装置が正常に動作するかを確認します。
工場では製造ライン停止、商業施設では営業への影響が生じるため、休日や夜間に実施されることが多くなっています。
臨時点検が必要なケース
臨時点検は定期点検とは別に、特別な状況が発生した際に実施する緊急性の高い点検です。電気設備の安全性確保や法令遵守の観点から、適切なタイミングでの実施が求められます。
最も一般的なのは異常発生時の緊急点検で、キュービクル本体や関連設備で異音、異臭、過熱、停電などの異常が発生した場合に実施されます。その他、電気工事実施中の工事期間中点検、工事完了時の竣工検査も重要な臨時点検です。
臨時点検の種類 | 実施タイミング | 主な目的 |
---|---|---|
異常発生時点検 | トラブル発生直後 | 原因特定・安全確認・復旧対応 |
工事期間中点検 | 電気工事実施中 | 工事品質確認・安全確保 |
竣工検査 | 工事完了時 | 法令適合性・性能確認 |
臨時点検の費用は定期点検とは別途計上され、緊急対応の場合は割増料金が適用されることもあります。しかし、異常を放置することで発生する大規模事故のリスクを考えると、適切なタイミングでの実施は重要な投資といえるでしょう。
キュービクル点検を怠った場合のリスクと被害
キュービクルの保安点検を実施しないことは、単なる法律違反にとどまらず、事業継続に関わる深刻なリスクを招きます。
停電による事業停止、感電・火災による人命への危険、波及事故による損害賠償責任、電気代の無駄な増加など、その影響は多岐にわたります。これらのリスクは時として取り返しのつかない被害をもたらすため、適切な保安管理の重要性を理解しておく必要があります。
停電事故による事業停止
保安点検を怠る最も身近なリスクが停電事故です。
外箱の損傷に気付かないことで、金属製の外箱が錆びて穴が開き、雨水が内部に侵入して停電を引き起こすことがあります。キュービクルの外観点検を定期的に実施していれば、このような損傷を早期に発見して対処することが可能です。
停電が発生すると、工場では製造ラインが完全に停止し、オフィスビルでは照明・空調・エレベーターなどが使用できなくなり、商業施設の場合は営業停止に追い込まれるだけでなく、急な停電により利用客が怪我をする危険性も生じます。
これらの事業停止による損失は、保安点検費用を大きく上回る金額になることが少なくありません。
特に24時間稼働が必要な施設では、数時間の停電でも数百万円から数千万円の損失につながることがあります。定期的な点検の重要性は計り知れません!
感電・火災事故の危険性
保安点検を実施しないと、漏洩電流の発生に気付くことができません。漏洩電流は絶縁不良や機器の故障により、電流が本来流れるべき経路以外に流れてしまう現象で、設備に触れた人が感電する危険性を生み出します。
月次点検における漏洩電流測定を怠ると、この異常を早期に発見することができず、重大な事故につながる可能性が高まります。
さらに深刻なのが、漏洩電流を原因とする電気火災のリスクです。高圧電気を扱うキュービクルでは、わずかな漏洩でも大きな熱を発生させ、周辺の可燃物に引火する危険性があります。
電気火災は通常の火災よりも消火が困難で、被害も甚大になりがちです。感電事故や火災事故は、謝罪や金銭では解決しきれない問題となるため、予防こそが最も重要な対策といえるでしょう。
波及事故による損害賠償責任
キュービクルが関係する事故で最も注意すべきなのが波及事故です。
これは自社が設置したキュービクルの事故がきっかけとなり、電力会社の配電線が停止し、同系列の配電線を利用している周辺施設まで停電させてしまう事故のことです。
波及事故の主な原因は設備の老朽化であり、適切な保安点検を実施していれば防ぐことができる事故でもあります。
波及事故の影響範囲 | 想定される被害 |
---|---|
近隣の工場・事業所 | 生産停止、機械設備への影響、製品廃棄 |
商業施設・病院 | 営業停止、医療機器停止、冷凍・冷蔵設備の損失 |
住宅地域 | 生活インフラ停止、食品廃棄、精神的損害 |
電力会社 | 設備復旧費用、代替電力供給費用、信用失墜 |
波及事故を起こすと損害賠償責任を問われる恐れがあるうえ、近隣施設との関係も悪化してしまいます。影響範囲によっては数億円規模の損害賠償請求を受ける可能性もあり、事業存続に関わる重大な問題となります。
近隣施設への影響
波及事故では同系列の配電線を利用している周辺施設すべてが停電の影響を受けます。
工場では生産ラインの停止により製品廃棄が発生し、病院では医療機器の停止により患者の生命に関わる事態も想定されます。商業施設では冷凍・冷蔵設備の停止による食品廃棄、データセンターではサーバー停止による情報損失など、被害は多岐にわたります。
これらすべての損害に対して賠償責任を負う可能性があるため、波及事故は最も避けるべきリスクといえます。
電力会社からの賠償請求
波及事故では電力会社自体も大きな損害を被ることになります。
配電線の復旧作業費用、代替電力の供給費用、設備の修理・交換費用などが発生し、これらの費用も事故原因者である事業者に請求される可能性があります。
電力会社からの賠償請求は高額になることが多く、中小企業では支払いが困難な金額に達することもあるため、保険による備えと併せて予防的な保安管理が不可欠です。
電気代の無駄な増加
保安点検を怠ることで見落としがちなのが、機器の劣化による変換効率の悪化です。キュービクルを設置する主なメリットは高圧受電契約により電気料金単価を引き下げることですが、保守点検を怠ると機器の劣化により変換効率が低下し、電力ロスが多くなってしまいます。
変換効率の悪化は段階的に進行するため、気付かないうちに電気代が増加していることが多くあります。例えば変換効率が5%低下した場合、月間電気代が20万円の施設では年間12万円の無駄なコストが発生することになります。
電気料金を抑えるためにキュービクルを導入したにも関わらず、メンテナンス不足により本来の効果を得られないのは本末転倒といえるでしょう。定期的な点検により良い状態を維持することで、キュービクル導入の効果を最大限に活用することが可能になります。
まとめ
キュービクルの保安点検は電気事業法によって義務付けられた法的要件であり、受電設備容量100KVAで月額9,000円~11,000円程度、200KVAで12,000円~17,000円程度、500KVAで20,000円~28,000円程度が費用相場となっています。
点検を怠ると停電事故、感電・火災、波及事故による損害賠償など深刻なリスクを招くため、適切な保安管理は事業継続の前提条件といえます。
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