
電力会社の電源構成を見ていると、「FIT電気」という言葉を目にすることがあります。再生可能エネルギーと同じように思えますが、実は明確に区別されているのをご存知でしょうか。
FIT電気とは、国が定めた固定価格買取制度(FIT制度)に基づいて買い取られた再生可能エネルギー由来の電気のことです。私たちが毎月支払っている電気料金には「再エネ賦課金」が含まれており、この費用がFIT電気の買取を支えています。
この記事では、FIT制度の仕組みからFIT電気の特徴、2022年に始まったFIP制度との違い、そして卒FIT後の対応まで、わかりやすく解説していきます。
この記事でわかること
- FIT制度(固定価格買取制度)の仕組みと導入背景
- FIT電気と再生可能エネルギーの違い
- 再エネ賦課金の負担額と単価推移
- FIT制度とFIP制度の違い
- FIT制度はいつまで続くのか、卒FIT後の対策
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この記事の目次
FIT制度(固定価格買取制度)とは?仕組みをわかりやすく解説
FIT電気を理解するためには、まずFIT制度そのものの仕組みを押さえておく必要があります。なぜこの制度が生まれたのか、どのように運用されているのかを見ていきましょう。
FIT制度とは
FIT制度とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が国の定めた価格で一定期間買い取ることを約束する制度です。FITは「Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)」の略称で、日本語では「固定価格買取制度」と訳されます。2012年7月に施行された「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に基づいて運用されています。
この制度のポイントは「固定価格」と「一定期間」の2つです。発電事業者は、あらかじめ決められた価格で長期間にわたって電気を買い取ってもらえるため、収益の見通しが立てやすくなります。これにより、太陽光発電などの設備投資がしやすくなり、再生可能エネルギーの普及が進むという仕組みです。
FIT制度の対象となる再生可能エネルギーは、以下の5種類です。
FIT制度の対象となる再生可能エネルギー
- 太陽光
- 風力
- 水力
- 地熱
- バイオマス
FIT制度が導入された背景
FIT制度が導入された背景には、日本が抱えるエネルギー問題と環境問題があります。
日本のエネルギー自給率は2022年度時点で12.6%と、先進国の中でも極めて低い水準にあります。エネルギー資源の約8割を海外からの輸入に頼っているため、国際情勢の変化によって電力供給が不安定になるリスクを常に抱えています。
また、火力発電に依存する日本は、発電時に大量のCO2を排出しており、地球温暖化対策の観点からも課題がありました。2011年の東日本大震災による原発事故を経て、原子力に代わるエネルギー源として再生可能エネルギーへの期待が高まったことも、FIT制度導入を後押ししました。
しかし、再生可能エネルギーの発電設備は建設や維持にコストがかかり、従来の火力発電と比べて競争力が低いという問題がありました。この課題を解決し、再生可能エネルギーの普及を加速させるために導入されたのがFIT制度です。
買取価格と買取期間
FIT制度における買取価格と買取期間は、発電方法や設備の規模によって異なります。住宅用の太陽光発電(出力10kW未満)の場合、買取期間は10年間です。事業用(出力10kW以上)の場合は20年間となっています。
買取価格は年度ごとに見直され、制度開始当初と比較すると大幅に下がっています。これは太陽光パネルなどの設備コストが低下したことを反映したものです。
| 認定年度 | 住宅用(10kW未満) | 事業用(10kW以上50kW未満) |
|---|---|---|
| 2012年度 | 42円/kWh | 40円/kWh |
| 2015年度 | 33円/kWh | 29円/kWh |
| 2020年度 | 21円/kWh | 13円/kWh |
| 2023年度 | 16円/kWh | 10円/kWh |
| 2025年度(上半期) | 15円/kWh | 10円/kWh |
買取価格は認定を受けた年度の価格が適用され、買取期間中は固定されます。たとえば2015年度に認定を受けた住宅用太陽光発電であれば、10年間にわたって33円/kWhで買い取ってもらえるということです。
FIT電気とは?再生可能エネルギーとの違い
FIT制度の仕組みがわかったところで、「FIT電気」について詳しく見ていきましょう。電力会社のプランを比較していると目にする言葉ですが、通常の再生可能エネルギーと何が違うのでしょうか。
FIT電気の定義
FIT電気とは、FIT制度に基づいて電力会社に買い取られた再生可能エネルギー由来の電気のことです。太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスといった再生可能エネルギーで発電された電気のうち、FIT制度を利用して買い取られたものが「FIT電気」として扱われます。
住宅の屋根に設置された太陽光パネルで発電した電気も、FIT認定を受けて売電していればFIT電気に該当します。
FIT電気と再生可能エネルギーの違い
同じ太陽光発電でも、FIT電気と再生可能エネルギーは区別して扱われます。その違いは「FIT制度を利用しているかどうか」という点にあります。
FIT電気の場合、買取費用の一部は私たち電気利用者が「再エネ賦課金」として負担しています。つまり、FIT電気の環境価値(CO2を排出しないというメリット)は、すでに国民全体に分配されているという考え方です。
そのため、FIT電気は電力会社が販売する際に「環境にやさしい」「CO2排出ゼロ」といった表現を使うことができません。一方、FIT制度を利用せずに電力会社が自己負担で調達した再生可能エネルギーであれば、環境価値をアピールして販売することが可能です。
| 項目 | FIT電気 | 再生可能エネルギー(非FIT) |
|---|---|---|
| 発電方法 | 太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス | 太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス |
| FIT制度の利用 | あり | なし |
| 環境価値 | 国民に分配済み | 電力会社が保有 |
| CO2排出量の扱い | 全国平均として計算 | 実質ゼロとして計算可能 |
電力会社の電源構成における表記の違い
電力会社は自社の電源構成(どのような発電方法で電気を調達しているか)を公開しています。この電源構成を見ると、FIT電気と再生可能エネルギーが別々に記載されていることがわかります。

上記はENEOSでんきの2022年の電源構成です。「FIT電気5%」「再生可能エネルギー7%」と区別されていることがわかります。FIT電気は「FIT電気(発電方法)」という形式で表記され、非FITの再生可能エネルギーとは明確に分けられているのです。
環境に配慮した電力会社を選びたい場合は、電源構成の中でFIT電気ではない再生可能エネルギーの比率がどの程度あるかを確認するとよいでしょう。ただし、FIT電気も発電時にCO2を排出しないクリーンな電気であることに変わりはありません。
FIT制度とFIP制度の違い
2022年4月から、FIT制度に加えて「FIP制度」という新しい仕組みがスタートしました。名前は似ていますがその中身は異なるので、ここで詳しく解説します。
FIP制度とは
FIP制度とは、再生可能エネルギーの発電事業者が市場で電気を売電する際に、市場価格に一定の補助額(プレミアム)を上乗せして支払う制度です。FIPは「Feed-in Premium(フィード・イン・プレミアム)」の略称です。
FIT制度では買取価格が固定されていましたが、FIP制度では市場価格に連動して売電価格が変動します。電力需要が高く市場価格が上がる時間帯に売電すれば、より多くの収入を得られる仕組みになっています。
プレミアム単価は「基準価格(FIP価格)-参照価格(市場価格の平均)」で計算され、1ヶ月ごとに更新されます。市場価格が低いときはプレミアムが高くなり、市場価格が高いときはプレミアムが低くなるため、収入がある程度安定する設計になっています。
FIT制度とFIP制度の比較表
FIT制度とFIP制度の主な違いを表にまとめました。
| 項目 | FIT制度 | FIP制度 |
|---|---|---|
| 買取価格 | 固定価格 | 市場価格+プレミアム(変動) |
| 売電先 | 電力会社が買取 | 卸電力市場で売電 |
| 収入の安定性 | 高い(価格固定) | やや低い(価格変動) |
| インバランス負担 | 免責(特例あり) | 発電事業者が負担 |
| 非化石価値の取引 | できない | できる |
| 対象 | すべての認定設備 | 主に大規模発電設備 |
FIP制度では、発電量の計画値と実績値に差(インバランス)が生じた場合、その調整コストを発電事業者が負担する必要があります。また、非化石価値を証書化して市場で取引できるため、環境価値を直接収益化することも可能です。
FIP制度への移行が進む理由
FIT制度からFIP制度への移行が進められている背景には、主に2つの理由があります。
1つ目は国民負担の抑制です。FIT制度では再エネ賦課金が年々増加し、2024年度には約2.7兆円規模に達しています。FIP制度では市場価格との連動により、買取費用の一部を市場収入で賄えるため、賦課金の増加を抑える効果が期待されています。
2つ目は電力市場との統合です。FIT制度では固定価格で買い取るため、電力の需給バランスに関係なく発電が行われていました。FIP制度では市場価格に連動するため、発電事業者が需要の高い時間帯に合わせて売電するインセンティブが働きます。これにより、電力システム全体の効率化が期待されています。
なお、すでにFIT認定を受けている50kW以上の発電設備については、事業者の希望によりFIP制度へ移行することも可能です。
FIT制度はいつまで続く?卒FITの概要と今後の見通し
FIT制度には買取期間が定められているため、いずれ「卒FIT」を迎えることになります。すでに太陽光発電を導入している方や、これから導入を検討している方にとって、卒FIT後の対応は月々の電気代に直結する重要なテーマです。
卒FITとは
卒FITとは、FIT制度の適用期間が終了し、固定価格での買取が終わることを指します。「FITを卒業する」という意味でこの言葉が使われています。
住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合、FIT制度の買取期間は10年間です。FIT制度の前身である「太陽光発電余剰電力買取制度」は2009年にスタートしているため、2019年から卒FITの対象者が出始めました。
卒FITを迎えると、それまでの固定価格での買取は終了し、新たに電力会社と売電契約を結ぶ必要があります。卒FIT後の買取価格はFIT適用時よりも大幅に下がるため、売電収入が減少することになります。
FIT制度の買取期間と終了時期
FIT認定を受けた年度ごとの卒FIT時期は以下のとおりです。
| FIT認定年度 | 卒FIT年度(10kW未満の場合) |
|---|---|
| 2015年度 | 2025年度 |
| 2016年度 | 2026年度 |
| 2017年度 | 2027年度 |
| 2018年度 | 2028年度 |
| 2019年度 | 2029年度 |
| 2020年度 | 2030年度 |
2019年には約53万件、2025年にも約18万件が卒FITを迎える見込みです。卒FIT後の買取価格は電力会社によって異なりますが、おおむね7〜10円/kWh程度と、FIT適用時の半分以下になるケースがほとんどです。
FIT制度の今後の見通し
FIT制度自体がなくなるわけではなく、新規の認定も引き続き行われています。ただし、大規模な発電設備については順次FIP制度への移行が進められており、FIT制度は主に住宅用など小規模な発電設備が対象となる方向です。
卒FIT後の対策としては、以下の方法が考えられます。
卒FIT後の主な対策
- 自家消費を増やす:売電より自家消費のほうが経済的メリットが大きい
- 蓄電池を導入する:昼間に発電した電気を夜間に使用できる
- 電力会社と新たな売電契約を結ぶ:卒FIT向けプランを提供する会社もある
- V2Hを活用する:EV(電気自動車)のバッテリーを蓄電池として利用
卒FIT後は売電価格が下がる一方、電力会社から購入する電気代の単価のほうが高いため、できるだけ自家消費を増やすことが経済的です。蓄電池やEVの導入により、発電した電気を無駄なく活用する方法が注目されています。
FIT電気のメリット・デメリット
FIT電気について理解が深まったところで、改めてメリットとデメリットを整理しておきましょう。発電事業者と電気利用者、それぞれの視点から考えてみます。
FIT電気のメリット
【発電事業者にとってのメリット】
FIT制度を利用することで、発電事業者は以下のメリットを得られます。
発電事業者にとってのメリット
- 収益の見通しが立てやすい:固定価格で一定期間買い取ってもらえるため、投資回収の計画を立てやすい
- 初期投資のリスクが軽減される:長期的な収入が保証されることで、設備投資のハードルが下がる
- 売電手続きがシンプル:電力会社が買い取るため、市場での取引は不要
【社会全体へのメリット】
FIT制度により再生可能エネルギーの導入が急速に進んだことは、日本全体にとって大きなメリットです。エネルギー自給率の向上、CO2排出量の削減、エネルギー安全保障の強化といった効果が期待されています。
制度開始以降、特に太陽光発電の導入量は大幅に増加しました。2012年度には全発電量の1.6%程度だった再生可能エネルギーの比率は、現在では約20%にまで拡大しています。
FIT電気のデメリット・注意点
【電気利用者にとってのデメリット】
電気利用者にとってのデメリット
- 再エネ賦課金の負担:電気を使うすべての人が毎月の電気料金で負担している
- 環境価値を直接享受できない:FIT電気の環境価値は国民全体に分配されるため、特定の電力会社を選んでも差がない
【発電事業者にとってのデメリット】
発電事業者にとってのデメリット
- 買取価格の低下:年々買取価格が下がっており、新規参入のメリットは薄れている
- 卒FIT後の収益低下:買取期間終了後は大幅に売電収入が減少する
- 非化石価値を活用できない:FIT電気では環境価値を別途取引することができない
FIT電気を選ぶ際の注意点として、FIT電気の比率が高い電力会社を選んでも、環境への貢献度に大きな差はないという点があります。環境に配慮した電力を使いたい場合は、非FITの再生可能エネルギーや、非化石証書を活用した実質再エネ100%のプランを選ぶ必要があります。
FIT電気に関するよくある質問
FIT電気やFIT制度について、多くの方が疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。
FIT電気を使っている電力会社はどこ?
FIT電気を調達している電力会社は数多くあります。電源構成を公開している電力会社であれば、「FIT電気」の比率を確認することができます。
たとえば、再生可能エネルギーに力を入れている新電力会社の中には、FIT電気の比率が70%以上というところもあります。「みんな電力」などは電源構成の大部分をFIT電気と再生可能エネルギーで構成していることで知られています。
ただし、前述のとおりFIT電気は環境価値が国民全体に分配されているため、FIT電気の比率が高いからといって特別に環境に良いというわけではありません。電力会社を選ぶ際は、電源構成だけでなく料金やサービス内容も含めて総合的に判断しましょう。
FIT電気は環境に良いと言えますか?
FIT電気も再生可能エネルギー由来の電気であり、発電時にCO2を排出しないという点では環境に良い電気です。
ただし、FIT制度のルールにより、FIT電気は「環境にやさしい」「クリーンな電気」といった表現で販売することはできません。これは環境価値がすでに国民全体に分配されているという考え方に基づくものです。
環境への貢献を重視するなら、非FITの再生可能エネルギーを多く含むプランや、非化石証書を活用した「実質再エネ100%」のプランを選ぶのがおすすめです。
FIT認定を受けるにはどうすればいい?
太陽光発電などでFIT認定を受けて売電するためには、経済産業省への事業計画認定の申請と、電力会社との接続契約が必要です。
手続きには専門的な書類が必要ですが、通常は太陽光発電の設置業者が代行またはサポートしてくれます。住宅用太陽光発電の導入を検討している場合は、施工業者に相談すれば申請手続きも含めて対応してもらえるでしょう。
なお、FIT認定を受けた後に長期間発電を開始しない場合は、認定が取り消される可能性があります。設備の設置から運転開始までのスケジュールを考慮したうえで申請することが大切です。
まとめ
FIT電気とは、FIT制度(固定価格買取制度)に基づいて買い取られた再生可能エネルギー由来の電気のことです。同じ再生可能エネルギーでも、FIT制度を利用しているかどうかで扱いが異なり、FIT電気は環境価値がすでに国民全体に分配されている点が特徴です。
FIT制度は2012年に導入され、再生可能エネルギーの普及に大きく貢献してきました。しかし、国民負担の増加などの課題もあり、2022年からは市場連動型のFIP制度も導入されています。
買取期間の終了(卒FIT)を迎えると売電収入は大幅に減少するため、蓄電池の導入などで自家消費を増やすことが経済的に有利です。これから太陽光発電の導入を検討している方は、FIT制度の仕組みと今後の見通しを理解したうえで、長期的な視点で計画を立てることをおすすめします。
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